(女性向けコミック)
タイトル
著者
ジャンル 出版社 発表年(初出)
天よりも星よりも
(全8巻)
(文庫版全4巻)

赤石路代
ちゃおフラワーコミックス 小学館 1987〜89
  謎の火事で両親を亡くした女子高校生・水守美緒はいとこの四条忠臣の家に引き取られますが、そこで次々に不思議な事件が起こり…?水をあやつる力を持つ美緒は、冷酷な火の使い手である忠臣に狙われ幾度も危機にさらされますが、同じ学校に通う女装の美少年・成宮澪が風を自在にあやつる力で美緒を救い、ともに忠臣に立ち向かいます。彼らは実は歴史上の人物の生まれ変わりなのですが、…以下ネタバレ注意!
…美緒は静御前、澪は源義経、そしてふたりをつけ狙う忠臣は…なぜか織田信長。どうせなら同時代の人物(頼朝とか)にすればいいのに?少女漫画特有の甘ったるい絵柄・作風ですが、全編に渡って「この人と出会うために生まれてきた」というシンプルかつピュアなテーマが一本気に貫かれており、少女向け転生ファンタジーロマンとして素直にワクワク楽しめる作品です。
★★★
  
源氏
(1〜8巻)
(文庫版もあり)

高河ゆん
ウィングスコミックス 新書館 1988〜93
  16歳の高校生江端克己は、失踪した最愛の恋人・桜を探して異世界「日本国」に乗り込んだ!そこでは源氏と平家が日本国の統治権をめぐって長い戦いを繰り広げており、克己は夭折した源氏(頼朝)にうりふたつだったことから身代わりとして戦いにまきこまれてしまう。頼朝を慕う義経(ガラ悪いけど純情な美形)や頼朝の幼なじみ平清盛(これも美形)ら、さまざまな人物との出会いを通じて克己は成長してゆく…。シャープな絵柄と独創的な世界観で人気を博した未完の大作ですが、出てくる男性キャラが皆「こんな奴いねーよ」的乙女ちっくキャラで、同人誌臭がぷんぷんしてて、ハマる人とハマれない人とがくっきり分かれそう。正直私もちょっと…。源平人物の名を借りただけのあくまでもオリジナルなSFストーリーだと思えば別に腹も立たないが。
  
時代ロマンシリーズ
「霧雨有情」<第1巻収録>
「冬の落日」<第3巻収録>
以下続刊…

河村恵利
少女プリンセス 秋田書店 1991〜
  オーソドックスながら骨組みのたしかな「読ませる」ストーリーと親しみやすいキャラクターが魅力的な「時代ロマンシリーズ」の源平関連作品。静と義経の不器用な純愛と頼朝の悔恨を描く「霧雨有情」、頼朝と敵対する義仲とその子義高を哀惜する義経の胸中に迫る「冬の落日」。登場人物たちをひとりたりともぞんざいにしない丁寧な作風には、実は少女マンガあんまり好きじゃない私も何ら不服はございません。ええ、たとえ義経が茶髪ポニーテールであろうとも。
★★★★
  
あぶない壇ノ浦
(あぶない丘の家シリーズ内)

萩尾望都
アスカコミックス 角川書店 1993
  ※小学館文庫『あぶない丘の家』内に収録
現代高校生真比古(まひこ)が、異世界からきた謎の兄・安曇とともにさまざまな事件に巻き込まれるスラップスティック・ファンタジーシリーズ。源義経に憧れる真比古は源平時代にタイムスリップし、頼朝・義経兄弟の悲劇を見届けます。ことあるごとに真比古のまわりの頼朝びいき・義経びいき・平家びいきの歴史マニア達が熱い主張をぶつけ合うので、時代の構図や人物関係が多面的に捉えられます。さしずめ大人向けの歴史学習マンガといったところ。見どころは萩尾望都の美麗な「義経」!清く正しく美しい、いい意味でのステロタイプ正統派義経。NHK大河「義経」の滝沢義経にイメージがぴったり重なります。うっとり…。対する頼朝はむさいおっさん風に描かれてはいますが、その悲しい生い立ちや苦悶する胸のうちが克明に描き出され、作者の愛と思いやりがひしひしと感じられます。
★★★★★
  
平家物語シリーズ
(全4巻)
月の船、星の林
きらめく波の飛沫
らせんは時を越えて
風は時を奏でる

佐久間智代
アスカコミックス 角川書店 1996〜98
  平家側(平敦盛、平知章)がメインの源平モノ。三巻目にしてやっと九郎義経(牛若)が出てきたな、と思ったらアチャー打ち切り。タイムスリップしてきた(らしい)弁慶や性格ワルそ〜な静御前など数多の謎と未消化の設定を残したまま…。出てくる源平キャラは総じてキャピキャピしてますが、軽いタッチながらけっこうヘビーなテーマが描かれてます。ストーリーはオリジナリティがあっておもしろいし絵柄もかわいいので歴史人物をアイドル視して盛り上がりたい皆さん(腐女子とか・・・笑)が楽しんで読むのに最適かも。しかしおまけページの平家キャラ女子高生ヴァージョンにはさすがにドン引き。お遊びとはいえこれはイタいわ。
★★
 
源平紅雪綺譚

大竹直子
アスカコミックス
角川書店
(再版・小池書院)
1996
(再版2007)
  「青蓮華(平経正の稚児時代)」、「源平紅雪綺譚(敦盛の最期)」、「遮那王宵月記(遮那王鞍馬時代)」の三篇を収録した源平時代コミック。細部まで丹念に描き込まれた美麗な絵柄、悲哀ただよう濃密なストーリー。見ごたえ読みごたえともに十分ですが、その徹底したお耽美ワールドというか腐女子好みな展開は好悪の分かれるところかも。私としてはソッチ系はさておいて、まずは遮那王が骨のある美少年でかわいくかっこよく描かれてるので大満足です。ちょっと「ますらお」とカブってる感がなきにしもあらずですが。
★★★★  
リョウ
(全13巻)

上田倫子
マーガレット 集英社 1996〜99
  女子高生「りょう」は実は幼児の頃にタイムスリップしてきた義経だった!そんな彼女と弁慶(美形)とのラブロマンスを主軸に平維盛(美形)と禁断の恋に落ちたり兄頼朝(美形)に襲われたり歴史を動かしたりする物語。絵はキレイだしストーリーもよく練られていて人気作だったというのもうなずけますが、すみません、私これダメ。ヒロインがとにかく致命的にウザい。見た目も性格も全然かわいくない。愛読者にはあれが魅力的にみえるのかも知れないけれど、いち義経ファンからすればあんなの義経を名乗って許される最低レベルにも達してない。ただのふつうの女の子、あるいはそれ以下。もてもてヒロインに自己投影したい少女読者や作者にとってはそのほうが都合がいいんだろうけど…。歴史という壮大な舞台で壮大な恋愛(逆ハーレム)を楽しみたいという独りよがりな願望は伝わってきても、義経という実在の人物に対する愛着や敬意はまったく伝わってこない。義経を汚すな!最後にフォローを。義経にとくに興味がない人、思い入れがない人が読めばフツーに面白いマンガだと思いますよ。(←棒読み)
  

時をかけた少女たち
「1186年の舞姫
〜静と義経〜」
<第3巻収録>

以下続刊

かやまゆみ
KCフレンド 講談社 1996〜
  ※文庫サイズコミック『時をかけた少女たち・平安〜鎌倉編)』も発売
日本史に登場する女性たちの物語を少女向けのわかりやすいマンガにした「歴史ヒロイン・シリーズ」。歴史の血生臭さ泥臭さを極力抑え、恋愛の機微をメインテーマに、甘くせつなく仕上げられています。義経と静御前の悲恋は第3巻に収録。「1186年の舞姫(ダンシング・クイーン)」というちょっとスゲエタイトルのわりにはごくごく画一的なあたりさわりのないストーリー。「あまりに有名だから創作の余地なし」とは著者の弁ですが、誰もが知ってるからこそ破天荒なことができるのでは?でも義経はさわやか美青年だし静もかわいく描かれてるから文句はない。ちなみにほかの源平キャラは第1巻に大姫と義高の「1183年のお婿さま」、第4巻に巴御前と義仲の「1184年の女武者」がそれぞれ取り上げられています。
★★★
 
妖狐伝 義経千本桜
(全4巻)

堤抄子
Gファンタジー エニックス 2000〜01
  歌舞伎「義経千本桜」をベースにした歴史ファンタジー。やさぐれ系の妖狐の若者「白狐」がひょんなことから義経と邂逅し、非業の死をとげた彼になり代わって郎党をしたがえ平家の残党らと戦います。メリハリのある今風のかわいい絵柄で、ギャグも多くて楽しく読めますが、物語の黒幕が崇徳天皇だったり真の敵は有名な「あの」妖怪だったりといろいろ凝った設定で、奥深いテーマ性を感じます。強く優しい義経、心清らかな静御前、個性豊かな郎党たちと触れ合ううちに突っ張りながらもどんどん「イイヤツ」になっていく主人公がほほえましい。小姓の貂丸(てんまる)とのドツキ漫才も笑えます。
★★★★  
天離る

安曇もか
スーパービーボーイコミックス ビブロス 2004
  ※スーパービーボーイコミックス『愛しく冷たい君』内に収録
頼朝と義経のあぶない兄弟愛、弁慶と義経の濃すぎる主従愛を描いた、いわゆる「BL(ボーイズラブ=女性向け)」コミックの一作。濡れ場もばっちりありますです。そういうのニガテな人は即まわれ右でお帰りを…。でも歴史的背景や人物の心理が丁寧に描写されており、絵も細部に至るまで美しく、BLものとはいえちょっとした歴史コミックの風格で、読みごたえは十分にあります。私は元来BL系には懐疑的な人間ですがこの作品は思いのほかおもしろく読めました。ひたすら純粋に愛を乞う義経のいじらしさ、それにつけいる頼朝のいやらしさ(笑)…。とにかく義経さえ可愛くて義経さえ愛されている設定なら、とくに文句はありません。
★★★★
  
義経伝
〜桜吹雪に散りゆく恋〜

描きおろしアンソロジー
ピチコミックス 学研 2004
  コミック:岡野史佳「天花の契り」/都筑せつり「花灯」/篠原烏童「終の住処と」/香椎オルカ「鞍馬山異聞」/冬森雪湖「浮き草の名」/たむら純子「光のどけき春の日に…」/霧島珠樹「弁慶譚 鬼の宴」
エッセイ:わたなべあじあ「女戦士と猛者の恋」/CHI-RAN「二人静」
ピンナップ:岩崎陽子/源義経の世界:手越原徹

豪華女性作家陣によるオール描きおろし義経アンソロジーコミック。“恋愛絵巻”と銘打たれただけあって静御前とのオーソドックスなロマンスや実は女性だった弁慶との悲恋などバリエーションゆたかな内容が楽しめます。しかし今風にアレンジされたキラキラゴージャス義経は私にはまぶしすぎる…。古きよき子供向け少女マンガの香りがする「天花の契り」が一番抵抗なく読めました。“清純派ヒロイン”静がいじらしいです。

★★  
紅蓮の義経記
(あかのぎけいき)

描きおろしアンソロジー
幻冬舎コミックス 幻冬舎 2005
  田村由美(カバーイラスト)/碧也ぴんく「鞍馬山異聞」/乾みく「ブラリ義経妄想の旅(イラスト・エッセイ)」/猪川朱美「朝霧の笛」/世哉雅英「静がその日の装束には〜『義経記』より〜(イラスト・エッセイ)」/松山花子「大事なことは鞍馬で学んだ」/斎藤岬「タカラモノ」/梶原にき「道」/真崎春望「腰越状異聞 血涙賦」/源義経関連資料・義経の足跡を地図と年表で辿る
話題の女性作家陣によるオール描きおろし義経アンソロジーコミック。鞍馬の遮那王時代、静との邂逅、頼朝との確執、失意の都落ちなど「義経ワールド」を幅広く取り扱っています。ストーリー的にはごくオーソドックスなものが多いですが、シリアス、ほのぼの、ギャグ等バラエティ豊かな内容で楽しめます。
碧也ぴんく版遮那王のかわいさは特筆モノ。
★★★
  
流転の風

楢崎壮太
ウィングスコミックス 新書館 2005
  運命とは変えられないものなのか――?数千年の時を経て、再び出会った平重盛と源義経。重盛は同じ歴史が繰り返されるのを止められるのか?楢崎壮太が描くもうひとつの源平ストーリー!
平家の不吉な未来を憂う青年重盛と、その平家を滅ぼす運命の少年義経の交流を描いたシリアスな転生ロマン。人気BL作家さん(らしい)ゆえ、もののみごとに美しい男達だけでストーリーが成り立ってます(でも「そういう」シーンはないからご安心あれ。…え?残念?)。宿命を背負った男達の葛藤というテーマはなかなか重くて引きこまれます。が、登場人物がみんな見るからに現代人なので源平モノという感じは全然しない…。
ちょいとネタバレ…終盤、兄頼朝(※出番なし)から追われる身となった義経は亡き重盛の形見であり平家の証である赤ピアスをつけて決然と去ってゆきます。「」義経にこだわる義経ファンには耐えられないだろうな〜こんなシーン。私はその件にはきわめてルーズなので気になりませんが。
★★
  
君いとほし
〜源義経恋絵巻〜

飴あられ
講談社コミックスDX 講談社 2005
  想いはただひとつ。源義経・木曽義仲・那須与一。戦乱の世に花開いた、源氏の武士たちの至高の純愛ストーリー!
義経、義仲、那須与一という有名どころの「純愛」物語が華麗なタッチで描かれています。義経の相手はもちろん静、義仲にはおなじみ巴。那須与一だけがオリジナルキャラとのラブストーリー。鵯越で知り合ったアネゴ肌の猟師の娘といじられキャラ与一の姉弟のような関係がほほえましい。義経はいかにも少女マンガ読者がポッとなりそうな、ちょいワルだけど心優しいニクいやつ。当然とびきりの美青年!外見も内面も大人っぽすぎるので個人的な義経イメージとはちがうけど、静とのピュアな恋模様はいじらしくてキュンとします。義仲と巴は悲しいクライマックスですが、他の二作品はハッピーエンドなので読後感も温かです。
★★★
  
白虹〜義経異聞〜
(全4巻)

中村理恵
ボニータコミックス 秋田書店 2005
  美貌の剣士・源義経は女!?女であることを隠し、源氏再興のため闘う源義経。彼女のまっすぐな心は弁慶、そして三郎をひきつける。平清盛の追っ手をしりぞけ、目指すは奥州藤原氏…!!美形がいっぱい!中村理恵が描く、絢爛豪華歴史絵巻!
帯コピーに思いっきり「美形がいっぱい!」と書いてある通り、キンキラ美形の弁慶や伊勢三郎や常陸坊海尊がことあるごとにヒロイン義経の危機を救っては虫酸の走るほど甘いセリフをささやいてくださるハーレクイン義経物語。恥ずかしーっ!そんな熱烈ラブコールを受けるヒロイン義経はひたすら一途なまじめっ子でちょっと地味ですが、可愛いし美人だし、バトルシーンではキリッと強いし、源氏の御曹司としての誇りや使命感、また女ならではのいじらしい微妙な心理も丁寧に描かれているのがポイント高い。史実&伝承をアレンジしたストーリー展開も堅実で嫌味がなく、義経=女という邪道な設定ながら内容は意外と王道な義経マンガです。でもメガネ男子な景時にはさすがにびっくり。
★★★
  
 
義経鬼〜陰陽師法眼の娘〜
(第1巻〜)

碧也ぴんく
月刊プリンセスゴールド  秋田書店 2014〜
鬼の兵法を体内に宿す娘・皆鶴と平家打倒を悲願とする九郎義経が合体事故!?義経となった少女と、彼女を守る男たちを描く歴史ファンタジー!
鬼一法眼の兵法を得るはずがなぜか法眼の娘・皆鶴の体内に取り込まれてしまった義経!分離の方法がわかるまで義経としてふるまうことになった皆鶴、そんな彼(彼女?)をとりまくゆかいな仲間たち(弁慶、喜三太、佐藤兄弟)…、というなんだかカオスな設定の物語ですが、主人公(皆鶴≒義経)はかわいいし義経は愛されてるし絵は美しいし、まずは満足です。長い連載になってくれることを期待します。
★★★
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